涙の欠片


「…は?」

「だから、ありがとう。あたしもう大丈夫だし、全然平気だし、一人で帰れる」

「…恵梨菜?」


キョトンとした顔で一馬はあたしを見つめ、その顔にあたしは笑みを漏らした。


「もーホントに大丈夫。一馬に迷惑かけらんないし…」

「俺は別に迷惑じゃねぇけど。でも、リュウさんに怒られんだけど」

「あたしとリュウはもう関係ないよ。リュウが何言ってんのか知らないけどリュウの話ばかり聞くんじゃなくて、あたしの事も聞いてよ」


一馬は何も言わずにあたしを見て黙り込む。

そんな一馬にあたしは笑顔で返した。


「大丈夫」


あたしがそう言うと「本当にいいのかよ」と顔を顰めて返す。


「うん」

「お前が決めたんなら、もう俺は何も言わねぇ」

「うん。1ヶ月もありがとう」

「あぁ」

「じゃあね」


軽く手を上げて振ると一馬は「あぁ」と言って自転車に跨り、左手をポケットに突っ込んだままあたしに背を向けて帰って行く。

黒髪に金のメッシュが入った髪が風に吹かれ一馬の背中が遠くなっていく。

あたしはその背中が見えなくなるまで見送った。