「ねぇ!!」


突然、前の席から張り上げた声が飛んできて思わずあたしの肩が上がった。

恐る恐る目を前に向けると薄茶で腰まであるストレートの綺麗な髪で、笑顔に満ちた女の顔が飛び込んできた。


「あたし、美沙って言うの」


ハキハキした口調で声を掛けニコッと微笑む。


「あー…、あたしは――…」

「綾瀬恵梨菜でしょ?あんた有名だよね?」


口調も見た感じもサバサバしている美沙はあたしの声を遮りジッとあたしを見つめる。


「ってか、有名って何?」

「だって有名じゃん。神崎先輩の女で…」

「あー…もう違うし」


素っ気なく返すあたしに美沙はあたしの机に両腕を置き、話に食いかかる。


「えっ、うっそ!!何で何で?」

「まぁ、色々と…」

「えぇ…勿体な。あんた達、端から見ても凄い似合ってたのに」


そう言って美沙は少し眉をひそめる。


「そっかな…。それよりよくしゃべるよね?」

「はぁ?普通だよ。恵梨菜が喋んないだけじゃん。でっ、改めて宜しく。あたしの事は美沙でいいから」


そう言って、美沙は右手を差出し、あたしはその右手に自分の手を重ね「宜しく」と呟いた。