涙の欠片


「考え直す気はねぇのかよ。俺はお前しかいねぇよ…、恵梨菜しかいねぇ」

「…ごめん。考え直す気はない。考えた結果がこれで、もう決めた」


リュウはそれ以上、何も言わなかった。

怒ってる顔でもなく焦ってる顔でもなく、ただ無表情の顔だった。

リュウはタバコを灰皿に打ち付ける。


時間が刻々と過ぎる中、あたしもリュウも口を開く事がなかった。

そして、リュウはあたしを見る事もあたしを説得する事もなかった。


「…荷物はまた取りに来る。リュウにはいっぱい迷惑かけた…ごめんね。リュウと出会えて良かった。
今まで…ありがとう」


あたしは最後の声を振り絞ってリュウのマンションを出た。

出た途端、また熱い涙が頬を伝って流れ落ちた。


あたしは何度、リュウに助けてもらったんだろうか…


本当はもっと一緒にいたい。

だけど、もうこれ以上リュウを苦しめたくない。

あたしの選択は間違ってるのかも知れない…


だけど今のあたしは、そうする事しか出来なかった。