涙の欠片


「おーい。お前ナンパしてんの?」


笑い声とともに近づいて来る足音の方に目を向けると茶髪で金のメッシュが入ったもう一人の男がこっちに近づいて来た。

あたしの前の地べたに腰を下ろすと手に持っていた缶コーヒーを口に含む。

首元から見えるゴールドのチェーンネックレスが、あたしは何故か怖く見えた。

確かこの人は一週間前、見た時にいたもう一人の男だった気がする。


「ナンパじゃねぇよ」


笑いとともに隣の男が返すと「どー見てもナンパじゃねぇかよ」と半笑いで返してきた。


「ちげぇよ。それよか名前何て言うの?」


2人の目線が同時にあたしに向けられ、その威圧感と目付きがあまりにも怖くなった。


「えっと…恵梨菜です」


2人の目付きの怖さに負けたあたしは自分の名前をポロッと口に出していた。