涙の欠片


通勤時間帯とは言え、この辺りはそんなに車の数は多くない。

こっから歩いて帰るのは相当な距離になる。


道路際に立って、たまに通りかかるタクシーに手をあげるけれど、どれも通りすぎて行く。


どうしよう…

身体が冷え過ぎて頬もヒリヒリして痛い。


タクシーが来るたびに何度も手を上げ続け、やっとタクシーが停まってくれた時には、もう8時を過ぎていた。

乗ってすぐに鞄の中からハンドタオルを出し足の裏の血を拭き取る。

車内の中は暖房がよくきいていて身体の芯から温まり少しホッとした。


病院に着きタクシーから下りて出入口の前で暫く立っていると中から勢いよく翔平が飛び出してきた。


「恵梨菜ちゃん!!何処行ってたんだよ」


翔平は心配そうな顔をして声を上げる。


「お参りしてた」

「は?お参り?」


そう言って翔平はあたしの手に握っているブーツと素足を見て目を見開く。


「何でお参りなのに素足なんだよ」

「うん…」

「うんって意味分かんねぇよ」

「リュウは…、リュウは目覚ました?」


翔平は顔を顰めて首を横に振る。