涙の欠片


いつも通り22時を過ぎると父と母の声はリビングから聞こえだす。

時たま混ざり合ってくる父と母の怒鳴り声。あたしの部屋まで聞こえてくる怒鳴り声。

あたしはその時間が好きではない。だから家に居ると疲れるからあたしの足は外へ向かう。


いつも通りに爆音を響かせながら走り去る車。それを眺めながらベンチに腰を下ろし、道路に目を向ける。


それが一週間経った時だった。



「ねぇ、アンタ毎日居るよね」


そう目の前で声を掛けてきた男は一週間前、過ぎ去る時に手を振ってきた男だ。

笑みを漏らす男に〝アンタもじゃん″と言いたいけれど、ここは声を飲み込んだ。


「あんま夜出歩かねぇほうがいいよ。この辺、危ねぇから」


そお言ってきた男は、あたしの隣に腰を下ろし男はタバコを取り出した。

って言うか、あんたも相当危ないと思う。