涙の欠片


部屋の壁に掛かっている時計に目を向ける。



…―――22:54。


あたしはベッドから起き上がりコートを羽織ってタクシーを呼び出した。

10分ぐらい経つと家の前にタクシーが来て、あたしはリュウのマンションの前で降りた。


エレベーターのボタンを押し、下まで降りてくるのを待っていると駐車場から微かに声が聞こえた。

それは、あたしにでも分かるリュウの声だった。

だけどはっきりとした内容は聞こえない。


あたしは駐車場の方へと足を進めると思いがけない光景にあたしの足は止まり、一気に身体が硬直した。

車体に背をつけてダルそうにするリュウの前に派手な女が立ちリュウの身体に触れる。


えっ…、

何…して…んの?


女は軽く背伸びをしてリュウの顔に近づけた瞬間、あたしの手から鞄が落ちバサッと音をたてた。


その音で振り向いたリュウの目とあたしの目が重なり合った。


「…恵梨菜…」