涙の欠片


あたし妊娠してんでしょ?

何でこんな事してんの?

赤ちゃんどうなってんの?


リュウは…

リュウは何処にいるの?

あたし死んじゃうの?


頭の中で駆け巡るのは、ただ恐怖と混乱と戸惑い。

本当に神経がおかしくなりそうだった。



“妊娠…”

確かにあたしは妊娠しててもおかしくはないと思った。

だって、避妊なんてしてなかったから…。

愛ししすぎて避妊なんて、まったくしてなかった…

そんなのいらなかった。



手術用の服に着替えさせられ、あたしはベッドに寝たまま看護師さん達に移動させられる。

部屋を出てすぐに駆け寄ってきたのは麗さんだった。

麗さんは目を潤ませながらあたしの手を握る。


「大丈夫だよ」


そう言った麗さんの隣でリュウは悲しそうな瞳でうっすら微笑み「待ってる」と声を漏らす。

そのリュウの顔を見て、思わず目から涙が頬を伝って落ちていた。


先生がリュウ達に何を言ったか分かんない。あたしだってはっきりした内容すら聞いていない。

痛さでそこまで聞ける状態じゃなかった。


手術室に入る前、麻酔科の担当医があたしに何時に何を食べたか確認する。


手術室に入って、ふと横の壁に目を向けると時計の針は丁度3時を指していた。


3時って…

もうそんなに時間、経ってたんだ…。


医師達が周りで動いていくなか、酸素マスクを取り付けられて、あたしの意識はそこで途切れた。