涙の欠片


あの夜、あの甲高い声で“ヤった仲じゃん”って聞いたのは事実。

だけど、それはあたしと出会う前の事で過去は誰にだってある事だし、あたしの過去も、もう絶対に塗り替える事もできない存在になっている。

リュウが言った“何もねぇよ”って言葉を信じようと思う。


考えれば考えるほどおかしくなりそうで…

考えれば考えるほど頭、痛くって…

それはリュウの事が好きだから考えるだけであって、リュウの事を信じてれば深く深く考えないでいいと思う。



放課後、いつも来ないリュウはあたしの教室へ来た。

そのままあたしはリュウの後に着いて行き車に乗り込む。

乗り込むまで一言もリュウとの会話なんてない。

もともとベラベラと話す仲じゃないけど、この空間は居心地が悪い。


エンジンを掛けて大音量で鳴り響く音楽をリュウは切り、エンジン音だけが鳴り響く。

そして、リュウは少し窓を開けてタバコを咥え火を点けた。


「…恵梨菜?」


暫く経った後、リュウは深いため息とともに煙を吐き出し、チラッとあたしに目を向ける。

あたしが向くとリュウと目が合い慌てて目を逸らし前を見つめた。