涙の欠片


無言でそれを持って足を進め、ヒールを履き出ようとした時、「恵梨菜」と母の声が聞こえ足を止めた。

ドアノブを握って後ろを振り向かないあたしに母は言葉を続ける。


「あんた、もっと自分の身体大事にしなさいよ」


背後から聞こえた母の言葉は初めて聞く言葉だった。

そんな母に何も返さずあたしは家を出る。


少し離れた病院までタクシーで行って、いつもの精神科に行って薬を貰った。

担当先生に“久しぶりですね”って言われた。

何で最近来なかったとか、何で薬なく眠れてたのとか1から10まで、あらゆる事を聞かれてあたしはその質問に受け答えをする。


だから、あたしは行きたくない。

だけど行かないと薬は手に入んない。


最後に言われたのは“量は守って下さい”との事だった。

守ってるつもり。守ってるつもりだけど、いつの間にか手が伸びてる。


家に帰って貰った薬をテーブルの上にばらまく。

ふとテーブルの上に置いてあった携帯に目がいき、携帯からは光が点滅している。

携帯を取って確認するとリュウからの着信が何回か入っていて握り締めていた携帯が突然、音を出して鳴り始めた。



…――リュウ。