涙の欠片


「学校は?」

「行かない」


そう言ったあたしに母は立ち上がりマグカップにミルクと砂糖を入れてレンジの中に入れる。

暫く経って、母はレンジからマグカップを取り出し、湯気がでているホットミルクをスプーンでかき混ぜてテーブルの上に置いた。


小さい頃、あたしが好きだった飲み物。

あたしが機嫌悪い時、あたしが様子おかしい時に母はいつも作ってあたしに差し出す。

母は椅子に腰を下ろし、指に挟んでいたタバコを灰皿に磨り潰した。


「昨日の夜、リュウ君が来たわよ」

「何て言ったの?」

「寝てるって言った」

「そう…」


あたしは素っ気なく返し椅子に腰を下ろしてマグカップに口をつけた。

寝てたのは、まぎれもなく本当の事だ。

甘いミルクを飲み終えると、あたしは目の前に座っている母に目を向けた。


「お母さん、保険証」

「何で?」

「病院行くから」


そんなあたしに母は何も言わず立ち上がって奥の部屋へと入って行く。

暫くしてあたしの目の前に保険証と1万円札が置かれた。