涙の欠片


壁に掛けてある制服。まだ一ヶ月しか着ていないけれど、これを身につけるのは好きじゃない。

何を望んで学校へ行かなくちゃ行けないんだろう。

嫌々、制服に着替えて鞄を抱え込みリビングに顔を出す。


「恵梨菜、ちゃんと食べてんのか?」


スーツに身を包んだ父が新聞を片手にタバコを吹かしながらあたしに声を掛ける。


「…うん」


素っ気なく返して冷蔵庫の中からミネラルウォーターを取り出しカラカラになっていた喉に流し込む。


「ちゃんと食べて行けよ」


そう告げた父は立ち上がりソファーの上に置いていた鞄を取り玄関に歩き出した。