涙の欠片


「リュウ」


少し離れた所から低い男の声でリュウの名前を呼ぶ声が聞こえ、その人が近づいて来る足音が聞こえる。

見られたくないこの姿に思わずリュウの胸に顔を埋める。


「翔平、タオル持って来い」

「あぁ」


あっ、翔平か…

だけど、あたしは顔を上げる事も出来ず、ずっとリュウの胸に顔を埋めていた。


「恵梨菜の左足に巻いて」

「うわっ!!すげぇ血出てんじゃん。病院行ったほうがよくね?」

「連れて行く」


その会話に「嫌っ!!」と、あたしは叫んだ。

こんな姿で行きたくない。

こんな乱れた姿で行きたくない。


「でも恵梨菜ちゃん行かねぇとヤバイよ」

「やだよ…」


啜り泣くあたしの足に翔平はタオルを巻き付ける。

タオルが傷口にふれた瞬間、痛みが走った。


「ねぇ、恵梨菜ちゃん…」

「やだ」


リュウは深いため息をつく。


「とりあえず連れて帰るわ」

「分かった」

「後頼むわ。中に麗も居んだよ。ちゃんと送ってやって」

「あぁ」


翔平の走る音が聞こえた後、リュウは足を進める。

その足はすぐに止まり、あたしの身体が勢いよくズリ落ちそうになった。


「きやっ…!!」