涙の欠片


震える身体…

もう声さえ出ない。


出てくるのは昔の記憶。



***

【ねぇ、何処行くの?】

【うっせぇよ。いちいち聞いてくんじゃねぇよ】

【何で?聞いてるだけじゃん】

【それがうっせぇんだろが!!お前、しつこすぎんだよ!!】


髪の毛を掴んで、あたしを壁に押しつける。

あたしの腕にアイツの拳が直撃して激痛が走る。


***


痛さと怖さがあたしの頭を支配する。

今の現状とかぶって、もうあたしと言う存在を消しそうだ…。


「俺から入れまーす」


男の笑い声がした後、あたしの口から大声が飛び出した。


「いやーーー!!」


あたしの心の中に溜まっていた大声が吐き出され、目の前の男は力強く手で口を塞ぎ、あたしの身体に唇を落とす。


いや…
頭、痛い…
気持ち悪い…


あたしの意識がぶっ飛びそうになった時、


…―――ダンッ――…


と、壊れかけた扉の音が鈍く部屋に響き渡り、男の怒り声とともに、あたしの上に覆いかぶさっていた男の姿が消える。

そしてあたしの腕を押さえつけていた男の姿もなくなり、ぼやける視界の中、女の人の顔が現れた。


「………れ…い…さん…」


震える唇で小さく呟くと息を切らした麗さんは、目には涙を浮かべ、あたしの身体を抱え隅の方へ移動する。