涙の欠片


「は…離して…よ」


震える声を出すあたしに男はフッと笑った。


「それは無理だな。あんたじゃなきゃ駄目なんだよ」


意味分かんない。
意味分かんない。


「どー言う事?」


男から逸らしていた目線を上げ、あたしはおもいっきり睨み付けた。

その拍子にあたしの腕にさっきより強い痛みが走る。

痛い。
痛い。
腕が痛い。


「簡単に言えば、あんたの男を困らせたいだけ。その悔しそうな顔が見たいだけ」


そう言って男はケラケラと笑い始める。

“あんたの男”――…


リュウの事?



「何すんの?リュウを困らせたいって何?リュウの悔しそうな顔って何?リュウが―――…」



―――…ガシャンッ――…


男がフェンスを殴った音であたしの口は遮られた。


「アイツの名前、出さねぇでくれっかな。事が終わったらお前帰してやっから」


そう言って男はうっすら微笑み、あたしの腕を強く引っ張り足を進めて行く。


「いやーッ!離して」


叫んで男の腕を離そうとしても全然離れなくて掴まれている、あたしの腕は真っ赤になってジンジン痛みが走りだす。


頭が痛い。



―――…リュウ…