涙の欠片


あたしは一息吐き、長くなり続ける着信音を止めようと通話ボタンを押し耳に当てる。


「…恵梨菜?」

「うん」

「お前、何処いんだよ?」

「家」


そう呟いた後、電話の向こうからリュウのため息が聞こえる。


「お前、帰るんだったら言えよ」

「……忘れてた」


そんな馬鹿みたいな、あり得ない事を言うあたしに「意味わかんね」とリュウは呆れた声を出す。


「お前、怒ってんのか?」


そう言われて“は?”と思った。

何であたしが怒ってんの?

怒ってんのはリュウじゃん。

わけわかんない衝動にぶつかり思わず“それはリュウじゃん”って言いそうになった。


「怒ってないけど」


平然さを保って返すとリュウは「そう…」と声を漏らす。


電話の向こうからカチッとライターの音が聞こえ少しの間、沈黙が続く。

耳に当てている所からはリュウの煙を吐く音しか聞こえなくて“じゃ、切るよ”って言うおうとした時、リュウは口を開いた。


「お前…。夜出る時、言えよ」


そう言ったリュウに、またあたしの口からため息が零れる。

何でか分かんないその言葉に頭が痛くなりそうだ。

電話越しから聞こえてくるリュウの声は、あの時の冷たい声じゃなかったけど、その事には深く聞かない事にした。


「…うん」


電話を切った後、あたしは深く布団に潜り込んだ。