涙の欠片


8月初め。

リュウの部屋でリュウを待ってから5時間が過ぎた。

携帯を見ると1:16と刻まれた文字。

ベッドに背をつけて抱え込んだ膝に顔を埋める。

何度かリュウに電話したけど繋がらない。


何処行ってんの?
何してんの?
何で電話に出てくれないの?


あらゆる気持ちがあたしを不安へと変えていく。

時間が経つごとに何度も携帯を確認して着信履歴を見る。

掛かってきてるはずないのに…

着信音すら鳴ってないのに。


でも落ち着かなくて、すぐに携帯に手が伸びる。

3時を過ぎてあたしの身体が床に密着して微かに開いていた目が閉じようとした時、ガチャ…っとドアの開く音がして、あたしの身体は一気に飛び上がった。


「……リュウ」


慌てて玄関に駆け寄るとリュウは凄い不機嫌な顔をして、何も言わずにあたしの横を通り過ぎる。

その後ろ姿を眺めていると、その後ろ姿でさえも怒りを出しているように感じた。

キーケースをベッドに投げつけタバコに火を点けて床に座り込む。


何か言ってよ…
ねぇ、リュウ。


暫く立ち尽くしていたあたしはリュウの近くまで行き小さな声を出す。


「…リュウ?」


そう呟いたものの、リュウは不機嫌な顔をして灰皿にタバコを打ちつける。


そう…

その顔は初めて会った時のリュウの顔に等しかった。