涙の欠片


「出ないの?」


リュウのポケットからまだ鳴り響いている着信音を耳にしながら、あたしはリュウに問い掛ける。


「あぁ」

「何で?」


そう言ったあたしの声はリュウがかけたエンジン音で消される。

もう一度、聞こうなんてあたしは絶対にしなかった。

しつこく言うのは嫌われる。

それにリュウが携帯を開けた時に見せた険しい顔つき。

分かんないけど…
分かんないけど…

怖かった。


いつも通りに、当たり前に何も話さない車内でも何だか今は居心地が悪かった。

いつもの空き地に着くと、翔平と麗さんが待っていた。


「おはよぉー」


車から下りると麗さんは明るく声を掛けてくる。


「よぉ」


口元の端を上げて微笑む翔平。


「おはよ」


そう言って麗さんに駆け寄ると「あのさ、」と麗さんは話を切り出した。


「夏休み、もうすぐじゃん?皆でバーベキューやるから恵梨菜ちゃんも来なよ」

「いいんですか?」

「いいよ。翔平も行くって言ってるし、リュウも来なよ。ね?」


麗さんはリュウに目を向けると「あぁ」と返事を返した後、タバコを咥えて翔平と話し始める。