涙の欠片


「声出せよ」


あともう一人いた男にそう言われるもリュウはタバコを地面に磨り潰し助手席に乗り込んだ。

居心地が悪いこの場所から早く抜け出そうと、あたしはその場から避けるように目を逸らし足を進める。

背後からエンジン音が鳴り響き、あたしの横でピタッと車が止まる。助手席の窓が全開され運転席からのめり込む様に身体を出し「じゃあね」と軽く手を振られた。


コクンと頷き助手席に目を向けるとリュウと言う男は無表情で、ずっと前に目を向けたままだった。

その整った顔は誰がどう見ても綺麗と言う顔なんだろう…。


走り去った車に深く息を吐き微かに震えていた身体を少し擦り、ポケットに押し込んでいる携帯を取り出した。

ディスプレイに映る2:06の文字を確認してから、あたしは家に帰った。