涙の欠片


下りてすぐ玄関まで行くとお母さんが買い物袋を提げて靴を脱いでいた。


「あっ、恵梨菜。あんた昨日、出掛けたまま男の家に泊まったでしょ?」

「えっ…、」


言葉を詰まらせるあたしを見て母はフッと笑い車の鍵を下駄箱の上に置く。


「表で待ってるのって、恵梨菜の男でしょ?あんたイカツイ男、好きね」


“あたしに似て”

そう笑って付け加え母はリビングの中に入って行く。


“イカツイ男、好きね”

母の言った事にある意味少し納得した。前の暴力男もリュウほどじゃないけどイカツかった。


「やばっ…」


あたしは慌ててヒールを履き玄関のドアを開けた。

車に背を付けてタバコを吸っているリュウは「遅ぇ」と声を漏らし少し眉を寄せる。


「ごめ…」

「お前の母親、綺麗な」


車に乗り込みリュウは吸っていたタバコを灰皿に押し潰し、そう言ってきた。


「そっかな…。派手だからそう見えんだよ。…え?何か話した?」

「挨拶しただけ。あと入んないの?って言われた」

「ふーん…」


正直、お母さんとリュウの会話を聞いてみたかった。

どんな風に話してたのか少し気になったし、リュウが挨拶したってだけで笑える。


「何、笑ってんだ?」


思わず漏れた笑みに「別に…」と素っ気なく返す。