涙の欠片


普段、人なんてじっくり見ないあたしでも何となく分かった。

麗さんが抜け出しただけで一気に静まり返る車内。

そんな静かな空間を破ったのは、たった一言のあたしの言葉だった。


「…ありがと」


小さく呟くあたしに翔平は「えっ、何?」と言ってバックミラーからあたしに目を向ける。


「なんか…あたしの所為で色々迷惑かけたし、あたしの為にわざわざ動いてもらってて…」


リュウが言ってた言葉がふと頭に過る。


“身近に誰かがお前の側にいた事を…”

“お前の傷を増やさねぇように側にいんだよ”



「あー…俺じゃなくてリュウに言いなよ」

「え?」

「俺は何もしてねぇよ。恵梨菜ちゃんずっとコンビニに居たでしょ?初めはさ、何してんだろって思って声掛けただけ。その日から側に居てやれって言ってきたのはリュウだよ」

「えっ、リュウが?」

「うん、リュウだよ。恵梨菜ちゃん初めて見た時、ボーっとしてて意識ねぇんじゃねぇのって感じだった。でさ、夜危ねぇから出来るだけ側に居てやれって言ってきたのはリュウ。だから俺は何もしてないよ」


信じられなかった。

だって、初めて見た時、背筋が凍るくらいおもいっきりリュウに睨まれたあげく“ジロジロ見てんじゃねぇよ”って吐かれたのに…。


何でリュウが?