そっか…
だから何となく分かった。
あたしの手元に鞄が返ってきた事も、タイミングよく翔平に止められた事も…
全て今になって分かった。
“話し掛けないで”
一馬に言った言葉が今になって胸にきつく締め付けられる。
人なんて頼っても仕方ないと思ってた。
人なんて信じても意味ないと思ってた。
言ったって何にもなんないと思ってた。
突き放す言葉しか言えないあたしは相当に愚かで、もっと自分が嫌になった瞬間だった。
「…がと」
「え?」
「だから、ありがとうって…」
「言う人、間違ってね?俺に言っても仕方ねぇよ。リュウさん達に言えよ」
そう言って一馬が立ち上がった瞬間、背後から聞き慣れた声が飛んできた。
「やっぱここに居た。恵梨菜ちゃん居ねぇから探すの苦労したじゃん」
後ろを振り向くと翔平がズカズカと歩いてあたしの所まで来て、荒れた呼吸を落ち着かせようとする。
「あっ、ごめん」
「リュウから電話あってさ、帰り家まで送ってやれってさ。アイツ今日来てねぇから」
「あー…え?あたし一人で帰れるよ?」
「ダメダメ。相当疲れてるっしょ?顔に出てるよ?」
翔平はうっすら笑ってフェンスに背を付けポケットからタバコを取り出した。
口に咥えて翔平はチラッと一馬を見て不気味な笑みを漏らす。
そんな翔平を見た一馬はスッと目を細め嫌な顔をした。



