今宵、月の照らす街で

成二が反射的に動いた。


風の気で加速しながら、鬼神との間合いを詰める。


右手に握った大剣を、身体を捻りながら繰り出す。


フォン、と風を斬る音に変わり、鬼神の右脚が身体から分離した。


成二は空いた左手を鬼神へと向ける。


「嵐月時雨!!」


バランスを崩した鬼神の身体を、次々と大剣が貫いた。


「オェァァァ……」


鬼神の身体に、次々と穴が出来ていく。


反撃も出来ずに、既にその姿すら保てなくなってい鬼神に対して、成二は静かに大剣を構えた。


「じゃあな」


そして、大剣を振り下ろす。


怒号と共に、鬼神を構成していた下級怨霊が浄化されていった。


「へぇ…強いね」


結衣が率直な言葉を放つ。


「…」


結衣の隣にいた桜は、その瞳に何か感情を浮かべて、成二を見ていた。


「成二が羨ましいの?」


「…そんな事」


桜が閉ざされていた口を開いた。


「嘘。そんな眼をしてるよ。でも、まだ何か隠してる」


「…」


「桜、イプシロンって奴に負けたんでしょ?何かあった、その時」


「別に…」


結衣は溜息をついた。


「話したくないなら今はいいや。でも、私達は仲間。あんまり一人になる必要はないから、いつでも話してね」