名取さんの言葉に、息が止まりそうになった。


犯人が、とても身近な人物かもしれない……?




目に見えない大きな恐怖が、心の奥から体中に駆け廻る。


私はゆっくりと息を吸い、膝の上で手を握った。




「宮本は、自分が捜査することで身近にいる美樹さんに何か起こるんじゃないかと思い、あなたを遠ざけたのよ」


「私を……守るためだったんですか」



名取さんはゆっくりと頷き、目を細めて口を開いた。



「彼は初め、美樹さんには事件が解決するまで距離を置きたいって話すつもりだったのよ。
けど、美樹さんが路上で私のことを口にしかけたことがあって……彼は咄嗟に別れを切り出してしまったの」


「どうして……」


「犯人がそれを聞いてる可能性があったから。
この辺で赤い車を乗ってるのは私くらいでしょ?
犯人に私と彼に繋がりがあることを知られてはまずかった。……だから、あなたが車のことを言いそうになった時、彼は止めようと必死に別れを告げた。
そして、別れこそが本当の愛なんだと感じてしまったのよ」




そんな……

あの時、おまわりさんが話があるって言ったのは、別れを告げるためじゃなかったんだ。


それなのに私は、勝手にふられると思い込み、おまわりさんの手を振り解いて……。