おまわりさんは少しの沈黙の後、静かに話し始めた。
「俺さ、中学の頃けっこう捻くれてて、万引きを疑われて捕まったことがあるの」
「万引き?」
「うん……けど俺はやってないよ。人のものを取ることと他人を傷つけることだけはしないって決めてたから。
けど、大人たちはすぐに俺を疑ったんだ。
日ごろの行いが悪いから仕方がなかったのかもしれないけど……」
自分を呆れたように話すおまわりさんの瞳は、とても寂しそうだった。
「すぐに警察官が来て、俺を取り調べしてさ……
その時に出会ったんだ。
美樹ちゃんのお父さんに……」
え……?
驚いた。
おまわりさんが中学生の時に、お父さんに会ってたなんて……。
「美樹ちゃんのお父さんだけだったよ。
俺の話をちゃんと聞いてくれたのは……。
疑いから見るんじゃなく、一人の人間としてきちんと話を聞いてくれた」
お父さんてそんな素敵な人だったの?
おまわりさんの話を聞いた私は、初めて『警察官のお父さん』を好きになった。
「俺、美樹ちゃんのお父さんに憧れて警察官になったんだ。
俺もどんな人でも真っ直ぐな視線で見られる警察官になりたい」
嘘みたい。
おまわりさんがお父さんに憧れて警察官になったなんて……。
こんな気持ちはじめてだよ。
嬉しすぎて胸が張り裂けそう……。