”どけろ”
微かに聞きとれたその声が、刃物のように体に突き刺さった。
怖い――。
再び恐怖の中に立たされた私は、手に冷やかな汗を握った。
一度きりの声の後、無言の圧力がおまわりさんの身に押し寄せている。
おまわりさんの体を潰すように、左右後方から強い力が加わっていた。
やだ、やめて――!
おまわりさんの表情が、更に歪む。
私の顔の横にあったおまわりさんの手が、ずるりと扉から滑り落ちそうになり、
おまわりさんは、必死にその手を元に戻し、腕に力を入れた。
おまわりさん――。
絶え間なく力を入れているおまわりさんの腕が、小さく震えだす。
苦しそうなおまわりさんを見ていると、涙が滲んできた。

