「智子、最近拓也くんと上手くいってる?」


『え……?』


「昼間、拓也くんの話題になると、なんだか智子不自然だったから……」


『そう? そんなことないよ』


「本当? 何かあるなら聞かせて? 私なんかじゃ何の力にもなれないかもしれないけど……」




私の言葉の後、少しの沈黙が流れる。


何も聞こえてこない電話から、重たい空気が伝わってくるようだった。




『あのね、美樹……』


思い詰めた智子の声に、私は電話をヒタリと耳に当てた。



『実は、拓也が行ってる学校って……警察学校なんだ』




思いがけない言葉に、心臓がドキッと音をたてた。



『ごめんね、黙ってて。
拓也、おまわりさんに会ってたから、警察官になりたいって言うようになって……。
美樹が知ったら、またおまわりさんを思い出させるんじゃないかと思って言えなかった』