恋 時 計 ~彼はおまわりさん~




「そうだよね。いつもでも先生って呼ぶのは、ね……。
一哉……て呼んでいい?」


私が名前を口にした途端、先生の顔は真っ赤に染まった。



「おう。なんか凄い新鮮……ていうか、凄い嬉しいな!」



人目を気にせず、嬉しそうに私をぎゅっと抱き寄せた先生に、胸が痛んだ。




ごめんね、先生……


ごめんね、一哉。



こんなに喜んでくれてる一哉の胸の中で

私はおまわりさんを思い出してる。


一哉と同じ気持ちでいられない。




一哉のこと、好きなんだよ。


一哉のことを知るたびに、一哉の温かさを感じてる。



なのに……


どうして『想い』は消えてくれないんだろう。





人は


本当に不器用で


どこまでも不確かな生きものだ……。