恋 時 計 ~彼はおまわりさん~




「どうしてかな……。私にもよくわからないんです」


おまわりさんの気持ちが離れた――

それしかわからない。



「たぶん、おまわりさんに好きな人が出来たんだと思うんです。
けど、それを隠してるような……。きっと全てに関して私の存在が迷惑になったんだと思います」



浅野さんは私の言葉を聞いて、悲しそうに瞳を細めた。



「こんなに美樹ちゃんを悲しませて……。
宮本が俺の息子だったら一発殴ってるぞ」

「私はもう大丈夫です。ふふっ、浅野さんは優しいですね」

「いや、そんなことは」

「息子さん、いらっしゃるんですか?」

「え? いや……ずいぶん前に死んだんだ」



浅野さんの思いがけない言葉に驚いた。

私、余計な事を口にした……。



「そんな顔しなくてもいいよ。
息子のかわりに宮本をコテンパンにしごいてるんだから。だから寂しくなんかないんだ」




少し寂しげな笑顔の浅野さん。


本当は寂しいんだよね。

きっと、だからこそおまわりさんのことを大切に思ってるんだ。