恋 時 計 ~彼はおまわりさん~




何も持たないまま病室に駆けつけると、お母さんとおばあちゃんが泣き腫らした顔で微笑んでいた。


そして、その奥のベッドで薄っすらと瞼を開けているお父さん。




「お父……さん」


ほんの少し指先を上にあげたお父さんの姿を見ただけで、

涙腺が壊れたかのように、次から次へと涙が溢れだした。



「よかった……よかったよぉ……」


こんなふうに声を出して泣いたのは何年ぶりだろう……。


小さな子供のように、わんわんと声をあげて泣いた。




「すま……なか……た」


擦れたお父さんの声が、余計に涙を誘う。


お母さんが泣いている私の肩を抱いて口を開いた。



「お父さん、気管の火傷のせいで声が擦れるのよ。
大丈夫よ、ちゃんと話せるようになるってお医者さんが言ってたから」


「違うの……。
私、声が聞けて、嬉しくて……」




嬉しいんだよ。


お父さんと

視線が合ったこと。



お父さんが

話しかけてくれたこと。



お父さんが

生きているということ。




全てが嬉しいんだ……。