「それで、お父さんに鞄の中を見せたの?」
「いいえ。僕が鞄の中を見せようとしたら……
僕の手を止めて『信じる』って言ってくれたんです」
お母さんの質問に答えたおまわりさんの表情は、
まるでその当時の情景を目に浮かべているように温かかった。
お父さんが言った
『信じる』
その一言が、どんなに嬉しかっただろう……。
どれだけおまわりさんの心を温めただろう……。
お父さんは温かい眼差しでおまわりさんを見つめ、語りかけるように口を開いた。
「おまえの目は、俺を真っ直ぐに見ていた。
それに、話してくれてる時に見えたんだよ。
鞄のチャックの入口からカーネーションの花びらが……」
「え……どういうこと?」
お父さんの言葉に、お母さんが首を傾げた。
「その店の配置はCD屋の隣に花屋があって、宮本はカーネーションを買おうと長い時間その辺をウロウロしてたんだよ。
中学の年頃の男が母の日にカーネーションを買うんだ、そりゃあ恥ずかしくてなかなか買えなかったんだろう」
「はい……それでより疑いがかかってしまったみたいです……」
また恥ずかしそうに答えたおまわりさんに、私は小さく微笑みかけた。
おまわりさんもそんな私に気づいて微笑んでくれた。

