私に気づいた先生は、驚いて体をビクッと動かした。
そんな先生を見て、私は声を出さずに笑った。
「驚かせるなよ。何かあったのか?」
私の傍に来て、小さく囁く先生。
その顔は、数時間前に廊下で会った先生とは違う教師らしい顔をしていた。
「これ、ありがとう……」
私はボストンバックの上に置いていた先生のシャツに手を伸ばし、先生に返した。
「ああ……」
シャツを目にした先生は、思い出したかのように低い声で反応し、シャツを受け取った。
先生、不機嫌なの……?
暗くて先生の表情がよく見えない。
「ねぇ、先生」
「ん?」
「隣のクラスの立花先生って綺麗だよね。先生のタイプ?」
「なんだよ、いきなり」
「修学旅行って教師にとっては大変なんだろうなーって思って。
恋でもしてたら、そんなのも楽しくなるでしょ?」
毎日見廻りやみんなの行動を仕切ってる先生。
昼間はあまり顔に出さないけど、きっとすごく疲れてると思う。
私みたいに恋してたら、
それも同じ学校に好きな人が居たら、先生も元気になると思うんだ。

