「う~ん、初めはね。けど……」
何もない天井を見上げて話す香織ちゃんの頭の中では、その時のことがリアルに映像化されてるんだと思う。
みんなは香織ちゃんの口が動くのを、息をのんで待っていた。
「ああ、やっぱりこんなこと口に出来ないわ」
思い出に酔いしれる香織ちゃんの言葉に、みんなはがっかり。
隣の布団にいる智子と私は、みんなの様子を見てくすくすと笑っていた。
智子の初体験は、とても辛いものだった。
けどその出来事を、拓也くんが思い出に変えてくれたんだ。
そして、素敵な思い出をくれた。
修学旅行の三日前、
智子と拓也くんは初めて体を結び、愛を深めた。
優しい拓也くんの胸の中にいると、今まで感じたことのない喜びで溢れたって、
智子は幸せそうに話してくれたんだ。
「智子、拓也くんに早く会いたいでしょ」
「うん、すぐにでも会いたい。美樹もでしょ?」
「うん。……早くおまわりさんに会いたい」
顔を寄せ合い、小さな声で話していた私と智子。
その会話を聞いた圭子が突然口を開いた。

