作業を始めた智子が、私に口を開いた。
「美樹はやっぱりおまわりさんのことが好きなんだね……」
「え……?」
智子の言葉で、私の手が止まる。
「普通好きになっちゃうよ。鈴木先生のこと……。
心の内を話せて、目の前で泣けて、相談できる男なんて滅多にいないよ。
私が美樹だったら、きっと好きになってたと思う」
「そうかな……?」
「うん、たぶんね。けど今の私には拓也がいるから、先生なんて眼中にないけどさっ!」
力強くなった智子の口調に、思わず笑った。
「ひど~い! 先生かわいそ~」
「だって拓也が一番だも~ん」
二人で笑い、肩を寄せ合った。
そうだよ
そうなんだ……。
私には、おまわりさんしかいない。
おまわりさんのことしか、好きになれないんだ。
もしも、先生が運命の人だったとしても、
私はきっと、
その運命を手にしないと思う。
おまわりさんと私が赤い糸で繋がってなくても……
私は、私の目に映る、
おまわりさんを目がけて手を伸ばす。

