「行ってきます」
おばあちゃんから貰ったネックレスをつけて、私は玄関のドアを開けた。
さっきまで大粒だった雨が、いつの間にか小雨になっていた。
水色の傘をさして、水たまりに入らないように足元を見ていた私を、低い声が呼んだ。
「美樹ちゃん」
その声に、ドキッと一気に胸が高鳴る。
傘で隠れている顔を見るために、私は傘を少し上にあげた。
「おまわりさん、どうしてここに!?」
目の前には、ビニール傘をさしたおまわりさんが立っていた。
駅前で待ち合わせだったはず……だよね?
驚いている私に微笑みながら、おまわりさんが口を開いた。
「雨降ってたから、外で待たせたら悪いと思って」
それでずっと家の前で待っててくれたの?
メールや電話で言ってくれたら良かったのに。
それに、駅に着いたらすぐに電話するって約束してたよ?
「ありがとう」
不器用で真っ直ぐなおまわりさんの優しさが、とても嬉しかった。
少し濡れたおまわりさんのシャツが、なんだか胸に沁みた。

