その間にトヲルが何気なく船長の方に目をやると、エミリーの背後に回り込んでいる姿が目に入った。

トヲルの位置からではその陰で見えなかったのだが、未だに動かないエミリーの後ろで、何やらゴソゴソとやっているようである。

そしてカチッという音がしたかと思ったら、エミリーが振動し始めて、目が突然開いたのだった。

どうやら、動かなくなったエミリーの起動スイッチを押したようだ。

瞬間船長の顔が、ぱあっと明るくなった。実に無邪気な笑顔である。

(船長…。なんだか、すごく緊張感ないんですけど)

自分のことは棚に上げつつ思う。

「非常にまずい事態になったわ」

漸くヴェイトがこちらに向き直り、先程とは打って変わって真剣な表情で、眉間に皺まで寄せながら言ってきた。

「非常にまずいって、どういうことだ?」