コウヅキはその街灯の下で、急に立ち止まると、短くなった煙草を投げ捨てて、近くにあった建物の壁に寄り掛かった。そして新しい煙草を、シャツの胸ポケットから1本取り出して銜え、火を付ける。

船の中では、煙草はミレイユが嫌がるので、ビルの屋上か外でしか吸うことはできなかった。

壁に背を凭れながら宙を見上げ、煙をゆっくりと吐き出す。

コウヅキはそれを、ただボンヤリと眺めていた。

『ミレイユを助けて―』

あの母親との約束。

タスクはそれを、ずっと守ってきたはずである。

それなのに何故、ミレイユの側を離れなければならなかったのか。

そこにどんな事情があったというのだろう。

(あの時に俺が、もっと詳しく話を聞いていれば…)





あの時―。