何もかもを失った。 すべては壊れた。 私は曇った瞳で今日も世界を見下ろしている。 思い出を捨て、嘆息してから私は再び歩き出した。 「落としましたよ」 ふいに、背後から声。 ゆっくりと振り向くと、そこに長身の穏やかそうな金髪の男が立っていた。 私は男の目も見ずに、小さく頭を下げて返事をした。 「あ、どーも。」 男の手には、小さな白いくまのストラップ。 かつて、私の大切な人に貰った、大切なもの。 でも、もういらないから。 忘れるって決めたから。