* * *



「雨ですねぇ」

「雨ですよ」

昼休みになってすぐ、自分の席についたまま、つまらなそうに教室の中から窓の外を眺めて芽衣が唸ると、いつの間に居たのか、真鍋が後ろから続けた。

「壱弥は?」

「さぁ?なんかね、さっき女の子に呼ばれてどっか行った」

「ふうん。うちのクラスの奴?」

「うん。たぶん」

気の無い返答をした芽衣の机に真鍋が腰掛ける。

芽衣は相変わらず窓の外を眺めたまま、真鍋を見ようとはしなかった。

「変だな」

「なにがぁ?」

「いや、こっちの話」

「あ、っそ」

珍しくテンションの低い芽衣の様子と、こんな芽衣を教室に置き去りにした壱弥に、ますます真鍋の首が傾いた。

というのも、今日は姫華も七恵も風邪で休みなのだ。
もともと風邪で昨日も休んでいた姫華は多少よくなったものの一応今日も大事をとって休むらしく、七恵は七恵で姫華の見舞いに行って風邪をもらってしまい、病院に行くために欠席と壱弥が言っていたのが記憶に新しい。

そんな状況で、壱弥が芽衣を置いて他の女とどこかに消えるという事が、真鍋には信じられなかった。

気色悪いくらいに過保護なくせに。

「ねえ、真鍋くん」

ちょいと服の端っこを引っ張られて視線を下方に落とす。

芽衣が心細そうに真鍋を見上げていた。