翌日、早速俺達は、アパートを一緒に出た。



バイクの後ろに、サクラを乗せて走る。


弱々しく俺の腰に手を回すサクラの感触だけで、いつもは憂鬱な俺の朝は、たちまち爽快に変貌した。



早送りしたような街並みを横目に、走り続ける。


自分用にひとつしかないヘルメットを、サクラにかぶせてやったおかげで、

俺を切りつけるように向かってくる容赦ない風に、頬を持っていかれそうになった。



途中、後ろでサクラが、笑い声を混じらせた声を出して、俺に何か言っているような気がしたけれど、

バイクから吐き出される騒音に掻き消されて、何も聞こえなかった。


だけど、後ろから伝わるサクラの期待は、確かだったから、前の俺も、頬の緩みが止まらなかった。



大学に着くなり、サクラはバイクから飛び跳ねるように降りて

「おっきいね」なんて言いながら、息を弾ませていた。



俺は、興奮気味のサクラを連れて、いつもの講義室に入る。


何百人単位で行われる講義に、先生も生徒も、

いちいち誰がいるのかなんて把握しているわけもないから、紛れ込ませることは簡単だった。



しかしやっぱり、全員が赤の他人というわけにもいかない。


いつもの見慣れたメンバーが、俺の姿を見つけるなり、こちらに寄ってくる。



「よっ、海斗」

「おう」


平静を装っているのはわかるけれど、見慣れないサクラを、やたらと気にしているのが丸わかりだ。


結衣との関係を知っているヤツは「浮気か?」なんて耳打ちしてくる始末。