「もぉ!カイのバカ。来るの遅いよ」


ベンチに腰を下ろすなり、開口一番、サクラはぷぅっと細い頬を膨らませてみせた。



「別に。いつって約束したわけじゃないだろ」


素直に謝る気にはなれず、ささやかな抵抗をみせてみる。

なんだか、言い訳してるみたいだ。



「そんなこと言って……どうせ迷ってたんでしょ」

「違うし」

「ま、でもカイは絶対来ると思ってたけどね!」

「なんだよ、それ」


……図星だよ。


迷いがあったことも、結局はここに来てしまっていることも……

サクラには、全てお見通しってわけだ。



コイツには敵わない。

なぜだかいつも、ペースを崩されてしまう。


素直にその事実を受け入れて、俺はサクラに向けて、小さな笑みを返した。



「カイ……」

「えっ!?ちょっ――」


俺の笑みに答えるかのように、急速に近付いてくる、サクラの顔。


例のごとくいきなりすぎるサクラの行動に、俺はまた、ガラにもなく焦っていた。