……!?


今、確かに背後から響いた声。

聞き覚えのある、あの声――



忘れるはずがない。


きっと……

いや、紛れもなくあの女の声だった。



俺の心臓が、再び激しく踊り出す。


何か、得体の知れない大きな渦が、俺に迫ってきていることを、

頭でも心でもなく、どこかが感じている。



……どうしよう。

一体、どうしたものか……


面倒なことに巻き込まれるのはごめんだ。


今まで安全に、真っ直ぐ歩いてきたレールを、今さら踏み外すことなんて、できない。

そんな大そうな勇気、あいにく俺は、持ち合わせていない。



やっぱりここは、そのまま気付かない振りをして、

すぐ目の前にあるバイクに、またがってしまうべき……



なのに……


どうやら俺の妙に鋭い直感は、女の声色が、

この前遭った時とは、微かに違うことに気付いてしまったらしい。



なんていうか、泣きそうっていうか、必死というか……


まるで、俺にすがり付いてくるかのような――



あぁ、クソッ。


そんなの……


止まらないわけにはいかないだろう。

振り向かないわけには、いかないだろうが――!