無気力なままで、池の前のベンチに寝そべっていると、

目の前には、果てしない底なしの暗闇が広がっていた。


私は視界一面を覆うそれを、ただじっと見つめ続けた。



私が見ているものが、闇だと気付くことができたのは、

その中にはひとつだけ、いびつな明りを放つものが大きく存在していたから。


闇に気付くためには、光がなくてはいけない。



……邪魔だな。

そう感じた理屈はないけれど、本能的にそう思った。


私は、夜空を汚すこの光を取り除いてしまおうと、奥行きの掴めない闇の中へと手を伸ばす。



けれど、手の平にすっぽりと収まるくせに、掴もうとするたびに

その丸い明りは、するりと私の手の中から逃げていった。



ハッキリしない意識の中で、こんな行動を繰り返している自分は、

やっぱり、きっとどこか、おかしな人間だったのだろう。


全身の感覚が、そう語っている。



クリアな記憶はなくとも、その事実を理解するには十分だった。