「ダメじゃん、慎悟〜」



ゆきが人差し指を振りながら、腰に手をあてて言った



「何が?」




「女の子の髪に気安く触ちゃダメだよ」



「は?なんで?」



「まったくわかんない」って顔してる



「だって『髪は女の命』って言うでしょ?
だから触っていいのは、彼氏と美容師だけなんだから」



当たり前でしょみたいな顔で熱演する 



慎悟は「う〜ん」って顔してこう言った



「そうかぁ?女同士でよく触ってるじゃん」



「それは同性でしょ?」



だからいいのって顔して言った 




呆れた。 



そんなの自分勝手な理屈初めて聞いたよ 



でも慎悟と紫音は「なるほどー」って顔して頷いた 



バカだなぁ、こいつら 



「ねぇ、それで誰と行ったの?」




「は?」



「紫音の聞いてたこと
誰と行ってたの?」



「ああ、先輩だよ」



「先輩?さちに一緒に髪切りに行くほど仲のいい先輩なんていたの?」



「失礼だねぇ、紫音は
もしかして部活の人?」



「うん。覚えてる?美央さん
ほら、よく遊んでもらったじゃん」



「ああ、美っちゃん?」



「そうそう!」



「へぇ〜まだ仲いいんだ」