「洗礼の儀、明日、日没午後7時15分、高円寺駅」
「7時15分!?」
「おそらく木嶋は藤真を高円寺駅に留めさせておき、当初の予告どおり午後6時66分、つまり7時06分に君のお父さんを殺してから藤真を殺そうとしたんだろう。しかし、メールの犯行予告が掲示板の犯行予告に比べて日時と場所が具体的であることを不審に思った藤真は急いで君の自宅に向かった……。そこに今回の事件を最悪の結末に迎えさせた最大の誤算があった」
「誤算!?」
「木嶋にとってそこにいるはずのない藤真が現れ、藤真にとってそこにいるはずのない君のお父さんがいた。そして今回の事件は起きた……」
「そういうことだったのか……」
「世間は藤真竜を賞賛した。自分の命を犠牲にしてまで他人の命を救った勇気ある青年だと……。果たしてそれは真実なのだろうか? 命を救われた他人とは本当に他人なのだろうか? 洗礼は成功した。ユダの末裔は現実のものになった。違うかい?」
「繋がった……」
「僕はこれだけギブしたんだ。今度は君がギブする番……」
 マキオは突然走り出した。
「オ、オイ!」