マキオは初めて息子に、いや他人に頭を下げる父の姿を見た。
「他人の子には東大を受験しろって言ってみれば自分の子には受験するなって言ってみたり、親のエゴだな。でも、お前が東大に合格した時、父さんは嬉しかった。本当に嬉しかった……。よくやった。頑張ったな、真樹夫。司法試験の合格も心から祈ってる……」
 マキオは初めて父の心情を知った。ずっと父に褒めてほしかった。「よくやった」「頑張った」って言ってもらいたかった。「これが父と子……これが家族……」熱いものが込み上げる。でも、今それを流すわけにはいかない。この場所に来た理由まで流されてしまう。マキオは懸命に耐えながら再び父に問い掛けた。
「父さん……。父さんはなぜ事件があったあの日、あの時間にあの場所にいたんですか?」
「呼び出されたんだよ。木嶋に……」