マキオがリンのことを気にしていると、突然客電が落ちた。マキオの緊張が一気に高まる。
“ワン・ツー・スリー・フォー”
 ドラムのカウントで演奏が始まった。と同時に入口の扉が開く。後方に気配を感じたマキオは振り向いた。
「!!」
 ショウだ。マキオはすぐに「このことか」と感づいた。これから一体何が起こるというのか? マキオの中で別の緊張が生まれていた。
 リュウが歌い出すとマキオは反射的にステージの方を向いた。聞き覚えのある曲。バンドアレンジでイントロではわからなかったが――Liberation――“俺達が初めて創った曲”。マキオにはもうわかっている。“俺達”とは“スライダーズジャイロ”。ショウの心情やいかに? マキオは恐る恐る振り返ってショウの様子を伺った。ポーカーフェイス。ショウは扉に寄り掛かって腕組みをしながら表情一つ変えずにステージを見つめていた。