「…寺脇ー!!帰ろうぜっ」
元男バスの誰かが言う。
「おう」
と返事をして、拓弥は歩き出そうとする。
そして、ピタっと止まった。
あたしの方に向き直って一言。
「幸せだったよ、ありがとな?
………大好き」
あたしの頭にポンと触れて、
頬には軽く優しいキスをくれた。
「あたしもっ……幸せだったよ…!!
…ありがとう」
拓弥の後ろ姿にそう叫ぶ。
歩きながら手を振る拓弥。
その影がとても……とても。
素敵で格好よかった。
拓弥………。
あたしはあなたが忘れられません。
どんなに違う恋をしても、
拓弥を思い出してしまうんだ。
優柔不断だけど……
忘れなくてもいいですか……?
あなたを愛した日々を。
あなたに愛された日々を。
あたしは一生かかっても、忘れることはできないだろう。
あなたと過ごした日々はキラキラして輝いていたから……。
消せない…
消したくない過去だって…
あってもいいよね…?
だって、それはあたしの進んできた道なんだもん。
それを消したら今のあたしはいない。
こうして、拓弥を想ってもいない。
だから……
消さないで、忘れないで。
あたしが忘れちゃったら想い出が可哀想。
せめて、あたしが覚えてなくちゃ。
心を込めて、『ありがとう』と言う。
あたしが進んだ道に…
過去に…
全てに。
ありがとう………。


