いちえ




「…う…うん?」


「はは、なーんだそれ」


「だっ…だって!!」


「ま、いつでも相談してきなさい」


「うん…ありがと」



前なら、こんな会話想像もできなかった。


慶兄と付き合った事で、別れて、何だか打ち解けれた気がする。


でもそれは、きっと慶兄の気遣いのおかげだろう。


私だったら、こんな話聞きたくないし話したくもない。



いつまでも甘えてしまって、いいのかな?


なんて考えていた私に、慶兄は快く想像しろなんて言ってくれた。


「ねえ、お兄ちゃんが居たら、こんな感じなのかな?」


「俺は何人妹と弟が居るんだ」


「えっと〜?」


「真面目に答えなくていい」



こんな兄弟が居たら、真っ先に想像しちゃうよ。


「仕方ないなあ、兄貴だと思って相談してきなさい」


「あはは、ありがとー」


「その代わり、ももは頑張りなさい」


「……はい」



宗太の家までの道のりを、二人で話も絶えずに歩いた。


別れたばかりのカップルなんて、きっと周りからは見えないだろう。


さっきまで胸が苦しくて、枯れる事を知らない程涙が溢れていたのに、今は胸の奥がポカポカとする。



「夏休み、田舎を満喫しろよ」


「うん」



みんなと一緒に、二十歳の思い出をたくさん作れたらいいな。



「るぅが逃げないようによろしく」


「…逃げるんだ」


「毎回な」


「へぇ……」



普通にるぅの話ができるなんて、思わなかった。


慶兄は、何でここまでしてくれるのだろう。