例えば、それがキオクだったら…



       *


「あれ?寄り道って、ここ?」

「…あぁ」

遼の簡単な質問に、相応な答えをくれてやる。

「こんなトコに何の用だよ?」

こんなところとは、見慣れた公園。

子どもが喜ぶような遊具も特にない、落ち着いた公園。

そう、珪の言う“寄るところ”とは、噴水公園だった。

「…まぁ、ちょっと…な」

「??」

珪は、軽く遼の言葉を受け流すと、昨夜と同じように

ゆっくりと噴水の方へ歩く。

遼は、不思議そうな視線を送っている。

「……いるんだろ?」

噴水の直ぐ前まで来て、珪が小さな声で言う。

それは、遼に向けられた言葉ではない。

今、この場には見えていない…一人の少女に向けられたものだ。

「は?あぁ、ここにいるぞ?」

遼は勘違いしているらしく、珪の言葉に応える。

「違う、お前じゃない」

馬鹿か?とでも続けそうな口調で、珪は否定する。

「……ほら、出て来いよ」

軽く遼を傷つけた後、薄く口元に笑みを浮かべて

珪は少女に語りかける。

見えてはいない。しかし、その場に居るような気がしたからだ。

いや、分かっていた。そこに彼女が居ると。

「……ん~…なんで分かっちゃうかなぁ」

一瞬、珪の前の空間が歪み、一人の少女が現れた。

そう、昨夜の少女…麻琴だ。

「いや…ただ、なんとなく」

珪は、麻琴の質問に答えになっていない答えを返して、

ちらと遼の様子を伺ってみた。

「な、な、なぁ~!?」

遼は、至って人間的なリアクションで驚いていた。